地域社会との連携に期待
名古屋大は2024年度、会社員や行政職員など医療者以外の社会人を対象とした全国初の医療IT講座を開設する。国が医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に本腰を入れる中、需要が高まる医療とITの両方が分かる人材の養成を目指す。(大森雅弥)
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医療ITについては、名大が中心になって21年から医師向けの講座を開いている。その経験を生かし、社会人に門戸を開くことにした。講座名は「名古屋医療情報学プログラム」。学校教育法に基づく履修証明プログラムで、講座を修了したことを国が証明する。
計画では初年度は6月に開講する。1回の講義はオンラインで3時間。全国の専門家約40人が週1回程度、約半年間講義を行う。まず医療倫理や情報セキュリティーなど、医療情報を扱う際の基本的な心構えを学んでもらう。医療の世界の基本知識として、看護師、薬剤師の現場の実態なども教える。さらに電子カルテ、治療データの利活用のほか今後注目されるビッグデータの最新情報も扱う。
定員は初年度は20~30人を予定。2年目以降は100~200人に増やす見込み。受講料は25万円。企業などの団体申し込みの場合、100万円で最大10人受講でき、事業所単位での参加を期待している。
国はデジタル技術を通して業務内容などを改善し、社会や暮らしの在り方を変革するDXを各分野で進めることに力を入れている。最も遅れているのが「医療、福祉」分野だ。総務省が21年3月に発表した聞き取り調査では「(DXを)実施していない、今後も予定なし」という回答が78・7%に上り、調査対象の24業種の中で最も多かった。
講座運営を担う名大病院メディカルITセンターの白鳥義宗センター長は「医療にとってITは、単なる業務の改善だけではなく、スマートホスピタル化を通して地域のスマートシティー化にもつながる可能性を持つ。具体的には病気になる前にその恐れを見つけ、予防するような在宅医療の実現だ。医療者だけではなく社会との連携が必要で、そこを担うような人材を育てたい」と話す。