がん治療に伴う脱毛など外見の変化に悩む人を支える「アピアランスケア」を巡り、医療用ウィッグ(かつら)購入費などを助成しているのは全国の市区町村の約52%に当たる904市区町村に上ることが一般社団法人「チャーミングケア」(大阪府池田市)の調査で分かった。
8月時点の1741市区町村の取り組みを調べ、約38%だった昨年10月の結果を上回った。代表理事の石嶋瑞穂さん(45)は「アピアランス(外見)という言葉が少しずつ浸透してきた結果だが、地域によってばらつきがある」と指摘。一層の支援充実を訴えている。
調査結果によると、ウィッグ購入費を助成しているのは834市区町村。上限額は「1・5万~2万円」が479市区町村で過半数を占めた。乳房の外科手術による変形をケアする下着など「乳房補整具」の助成は715市区町村。市区町村とは別に、都道府県が一部助成額を負担しているケースもあるという。
これらのアピアランスケア助成事業の2021年度の申請者数は、有効回答のあった320市町村で計約7千人。うち子どもの申請は11人にとどまっている。石嶋さんは「子どもにはまだまだ支援の手が行き届いていない」として、がん治療経験のある全国の子どもたちへの意識調査も開始。外見の変化が気になったかどうかや、悩みを話し合う機会の有無などを尋ね、結果がまとまり次第公表する。
全国自治体調査の結果はチャーミングケアのホームページで閲覧できる。
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子どもこそ かわいいかっこいいグッズで前向きに
大阪の社団法人が販売
チャーミングケアは8月、アピアランスの変化に悩む子向けの医療ケアグッズを展示、販売するコミュニティースペースを大阪府池田市に開いた。石嶋さんは「子どもたちが悩みを共有し、つながる場所に」と力を込める。
2016年、小学2年だった長男壮真さん(14)が急性リンパ性小児白血病と診断された。カテーテルを挿管したまま闘病生活を送ることになり、体外に延びたカテーテルのカバーを作るよう病院に依頼された。石嶋さんは友人がブランド品の布で作ってくれたカバーを利用してみた。「ちょっと、これ見てよ」。ふさぎ込みがちだった壮真さんの表情が和らぎ、看護師らに話しかけるようになった。
石嶋さんはケアグッズの可能性を感じ、同じ悩みを持つ子どもや保護者らに「かわいい」や「かっこいい」を届けようとチャーミングケアを立ち上げた。
デニム地のカテーテルカバー、治療の副作用で髪の毛が抜けた頭を包むバンダナ風キャップ。デザインに優れた多様なグッズを販売するECサイトを運営する他、壮真さんを講師としてオンライン研修も行い、見た目のケアの大切さを訴えている。「チャーミングケアラボ」と名付けたコミュニティースペースは当面、予約制で公式ホームページから申し込める。