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入院中の夫と画面越しに面会する女性(手前)=4月、鹿児島市の林内科胃腸科病院で(同病院提供)
新型コロナウイルスの感染拡大により、介護施設や病院でビデオ通話などを使った「オンライン面会」が広がり始めた。感染防止のため入所者と家族が直接顔を合わせられない状況が長期化する中、双方の安心感につながっている。「今後、インフルエンザなどの感染症流行期にも利用できる」と期待する声も出ている。
「歩こう歩こう、私は元気」。5月初旬、岐阜県多治見市のサービス付き高齢者向け住宅H&N宝慈苑。熊谷房子さん(71)が施設の一室に用意されたパソコンの画面を通じて、入居中の夫の一文さん(73)と一緒に歌う。
「四月上旬は体調が悪かったので心配だったけれど、元気な時と同じように歌えてよかった。孫が歌っていた歌なんです」と房子さん。コロナが流行する前は毎日面会に通っていたが、感染防止のため一カ月弱面会禁止となっていた。「やっぱり顔が見られるとうれしい」と声を弾ませる。
厚生労働省は二月、感染防止策として特別養護老人ホーム(特養)など介護施設での面会を可能な限り制限するよう求めた。直接面会の再開が見えない中、今月に入ってオンライン面会が望ましいとの通知を出した。
病院でも取り組みが始まる。群馬県沼田市の内田病院では、認知症の入院患者の家族から「長期間顔を合わせないと、自分のことを忘れられてしまう」と要望があり、テレビ面会をスタートさせた。患者一人につき週一回の枠を設け、全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者も文字盤を使って会話した。
オンラインの課題はインターネット環境の整備と、面会のサポートをする職員の確保だ。耳が遠い人の補助や機器の操作をする人が必要になる。鹿児島市の林内科胃腸科病院は、ソーシャルワーカーが中心となって担当し、病院外からの面会にも対応。東京在住の家族が入院患者と面会することもできる。花田博実理事長は「人手不足の施設ではなかなか難しいのではないか」と指摘する。
「介護者メンタルケア協会」(東京)の橋中今日子代表にも介護施設にいる家族と長期間面会できないことを悩む相談が寄せられている。橋中さんは「施設にオンラインで会えないか聞いてみるのも一つだ」と提案する。
2020年5月19日(火)中日新聞朝刊