医療・介護・福祉就職ウェブ CHUNICHI HEARTFUL JOB25
求人数

人生のサポーターを目指すあなたを中日新聞が応援します

お問い合わせ採用ご担当者様へ

求人情報を探す求人情報掲載件数25会員登録は無料!!会員登録をするとあなたにいち早く優良求人情報をお届けいたします。登録する

求人情報求人情報掲載件数25

条件クリア

閉じる

雇用形態で探す

職種で探す

勤務地で探す

施設形態で探す

あなたに合った仕事を探す

キーワードで探す

その他条件で探す

条件クリア

中日ハートフルジョブ > NEWS&TOPICS > 【医療】がんと闘う緩和ケア医 講演で訴え 傾聴大切に 信頼築いて

医療・介護・福祉就職ウェブ CHUNICHI HEARTFUL JOB NEWS&topics

NEWS & TOPICSおすすめのお仕事取材やあなたの知りたい情報をお知らせいたします。

【医療】がんと闘う緩和ケア医 講演で訴え 傾聴大切に 信頼築いて

2020年01月28日(火)

 闘病記「緩和ケア医が、がんになって」(双葉社)の著者で、進行がんと闘う医師、大橋洋平さん(56)が20日、名古屋市千種区の愛知県がんセンターで講演した。日々、現場で患者と向き合う医師や看護師らを前に訴えたのは、患者の話に耳を傾け、信頼関係を築く大切さだ。患者の苦しみを和らげる緩和ケア医であり、今は患者でもある大橋さんの言葉は重く、スタッフは耳を澄ませた。 (編集委員・安藤明夫)

「患者の思いに耳を傾けて」と話す大橋洋平さん(右)。左は、下山理史緩和ケアセンター長=名古屋市千種区の愛知県がんセンターで

 愛知県弥富市の海南病院に勤務する大橋さんは、2018年6月に悪性度の高い希少がんのジスト(消化管間質腫瘍)と診断され、胃の大半を切除した。しかし、昨年4月に肝臓への転移が判明。体の負担が大きい外科手術を断念した。

 今は、抗がん剤治療を続ける一方、血小板や白血球の減少などの副作用と闘いながら、東海地方を中心に月2回ほどのペースで講演を続けている。昨年8月に出版した「緩和ケア医が、がんになって」は1万部を超す売れ行きだ。

 この日、まず話したのは「患者の症状には教科書に載っていないものもある」ということ。食事を禁じられた手術前のことだ。もともと体重が100キロ以上あって食べるのが大好き。出された液体の栄養剤が口に合わず苦労した。しかし、他の患者たちはそうでもない。個人差を痛感したという。手術後、「体を動かしなさい」と言われたのもつらかった。おなかの手術痕は長さ30センチにも。ちょっとしたことで激しく痛んだ。

 退院してからは食べ物を受け付けなくなった。消化液が逆流してきて苦しい。吐いて出そうとしてもうまくいかない。それまで、医師として「食事を取らないとだめですよ」と気軽に言っていたことを反省した。体重は40キロ以上減った。

 医療の現場は多忙だ。こうした苦しみを伝えたくても、スタッフには声をかけにくい。

 大橋さんが緩和ケア医として大事にしてきたのは「傾聴」だ。人は語ることで気持ちが落ち着いて考えが整い、生きる意欲がわく。「患者さんが話を聴いてほしいタイミングを把握し、しっかり聴くことが大切」と指摘。そうすれば「『この人は私を分かってくれようとしている』と信頼感が生まれる」と力を込めた。

 そもそも緩和ケアとは何か。国のがん対策推進基本計画は「がんと診断された時からの緩和ケア」を、重点課題の一つに掲げる。がん患者や家族は、告知や再発、転移といったさまざまな場面で、体の痛みや心の苦しみ、絶望感に襲われる。がんと診断されたその時から、必要に応じてつらさを和らげ、生活の質をより良くするのが緩和ケアだ。以前は、がんを治すことばかりに関心が向けられていたが、近年は生活の質も同じように大切とされる。ただ、当事者の中には「緩和ケア=終末期の患者を対象にしたホスピスケア」と誤解し、一人で抱え込む人が少なくないという。

「患者の自律」にも理解を

 緩和ケアの考え方を踏まえ、大橋さんが強調したのは「患者の自律」という言葉。「自分の考えた通りに過ごせること」という意味だ。転移が見つかった際は絶望した。生きる意味を取り戻せたのは、出版や講演といった「次の目標」を持てたことに加え、患者になったことで異なる分野の友人が増えるなどの新しい体験ができたから。家族や主治医が思いを理解してくれたことが大きかった。「自律が保たれていると、患者は楽に生きられる。損なわれると苦しくなる。自律を損なわないよう見守って」と要望した。傾聴によって患者と良い関係が築ければ、日々忙しい医療者の燃え尽き防止にもつながる。大橋さんは「医者や看護師だけでなく、(リハビリ関係者や栄養士ら)医療に携わる人は誰もが話を聴く存在になれる」と促した。

 この日、講演会の座長を務めた愛知県がんセンターの下山理史・緩和ケアセンター長は「専門的なスタッフはどこも多くないのが現状だが、医療の現場は全てが緩和ケアの場だと思う。それが浸透すれば、普段の診療やケアはもっと豊かになる」と話した。

2020年1月28日(火)中日新聞朝刊

戻る <【医療】がんと闘う緩和ケア医 講演で訴え 傾聴大切に 信頼築いて> 次へ

ページ先頭へ