新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)が広まる中、岐阜県内でも感染者が確認された。感染症に詳しい岐阜大病院の村上啓雄(のぶお)副病院長(61)に、新型コロナウイルスの脅威はどの程度なのか、どう対処すべきなのかを聞いた。
-新型コロナウイルスに不安が高まっている
人に感染するコロナウイルスの多くは、いわゆる風邪の原因でポピュラーなもの。2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)は感染して亡くなる割合が約10%だったが、COVID19は、直近のデータで見ると致死率が2・94%。ただ、もう少し時間をかけないと正確な数値は分からない。
新型コロナウイルスが注目されるのは、知らないことによる不安と治療法がまだないためだが、治療法があるウイルス感染症は、実はインフルエンザやB・C型肝炎など一部にすぎない。ただ、死亡率が極端に高くはないものの死者が出ていることは確かで、予防知識をしっかり持った上で必要なことをするべきだ。
-市中で症状のない人との接触が心配だ
感染しても発症するまでの潜伏期や、治ってからもある程度の期間はウイルスが体内にいる可能性がある。しかし、無症状の人からは、家族で生活を共にするなど濃厚な接触でうつる可能性があるものの、買い物などで人とすれ違うだけではうつらない。一般社会での接触程度ではまず無視できる。発症した人への対処に注力すべきだ。
コロナウイルスがうつるのは基本的に接触感染と飛沫(ひまつ)感染だ。手や粘膜面が直接触れることのほかに、間接的にドアノブや電車のつり革、手すりなどを触ることによる間接的な接触感染もある。
飛沫感染は、はしかや水ぼうそうなどの空気感染とは異なり、約2メートル以内で対面した時にせきやくしゃみでウイルスを含んだつばが届くことで感染する。
インフルエンザなどと同じく、外出時にマスクをし、小まめに流水とせっけんを使った手洗いが大切。入手できればアルコール消毒も有効だ。
-マスクはウイルス防止に役立たないとの意見も聞く
通常のマスクではウイルス粒子そのものは通す。ただコロナウイルスの粒子は、唾液などとともに水を含む大きな粒子で飛び、約2メートル以内に地面に落ちる。症状がある人が全員マスクを着ければ良いが、現実には難しい。だから今は全員がマスクをする時期だと思う。至近距離で密集する電車や集会ではマスクを着用すべきだ。
鼻に掛けたマスクは時間がたつと落ちてくる。直す時に汚い手が鼻の穴に触れてしまう。医療関係者に感染した例は、おそらくこういう接触も原因だと考えられる。
-県内でも感染者が出たことを受け、県民に呼び掛けることは
感染者が身近に出た段階でも、予防対策はあまり変わらない。多くの人が触れたところを触れば、手洗いを頻繁にする。人が集まる場所ではマスクを着用する。基礎疾患があり免疫力が下がっている人や体力が失われている高齢者、妊婦は重症化する可能性があり要注意だ。不要不急の外出を避け、予防を徹底してほしい。 (稲田雅文)